新しい社内システムを導入する際、
多くの企業では操作マニュアルや
説明資料を用意します。
しかし、どれだけ丁寧に資料を作っても、
実際の利用開始後には、
「ログインできない」
「どこから申請すればよいのか分からない」
「領収書はどうやって登録するのか」
「以前の申請方法と何が変わったのか」
といった問い合わせが
担当部門へ集中することがあります。
社員1人1人にとっては初めて使うシステムでも、
問い合わせを受ける総務や経理の担当者からすれば、
同じ内容を何度も繰り返し説明することになります。
今回は、経費精算システムの刷新に伴う操作説明を
短い動画に分けたことで、
問い合わせ件数と対応工数を
大きく削減できた事例をご紹介します。
100ページ近い説明資料をPDFで配布する予定だった
大手情報通信業の企業で、
全社的に新しい経費精算システムを
導入することになりました。
今回の変更では、
システムの画面や操作方法だけでなく、
申請から承認までのワークフローも変わります。
そのため、社員向けの説明資料として、
合計100ページ近いスライドが作成されました。
当初は、この資料をPDFにして
社内へ配布する方法が検討されていました。
しかし、過去に同様のシステム変更を行った際には、
詳細なマニュアルを用意したにもかかわらず、
十分に読まれなかったという経験がありました。
利用開始後には、
「ログインできない」
「申請方法が分からない」
といった問い合わせがヘルプデスクに殺到。
総務や経理の担当者が対応に追われ、
通常業務を止めざるを得ない状態になっていました。
100ページの資料を作ることと、
社員が必要な情報にたどり着けることは、
同じではありません。
資料に情報が不足していたのではなく、
必要な場面で必要な説明を探しにくいことが
問題だったのです。
資料をそのまま長い動画にはしなかった
そこで今回は、
作成済みのスライド資料をベースに、
操作説明を動画化することになりました。
ただし、
100ページの内容を最初から順番に説明する
長編動画にはしていません。
「新システムへのログイン方法」
「承認ルートの変更点」
「領収書のアップロード方法」
「経費申請の基本手順」
といった機能や利用場面ごとに内容を分け、
1本あたり3分以内の動画を約20本作成しました。
完成した動画は社内ポータルサイトに掲載し、
社員が必要なときに必要な動画を
選んで見られるようにしました。
すべての機能を
網羅的に動画化したわけではありません。
過去に問い合わせが多かった項目や、
新旧システムで操作が大きく変わった箇所、
社員が最初につまずきやすいポイントを
優先しています。
目的は、
立派な動画マニュアルを完成させることでは
ありません。
社員が困ったときに、
自分の知りたい項目だけを探して
確認できる状態を作ることでした。
問い合わせ件数が60%減少
動画を社内ポータルへ掲載した結果、
問い合わせ件数は、
過去の同様のシステム導入時と比べて
60%減少しました。
社員が総務や経理へ問い合わせる前に、
該当する動画を探して
自己解決できるようになったためです。
PDFマニュアルの場合、
100ページ近い資料を開き、
目次やページをたどりながら
必要な説明を探さなければなりません。
一方、動画が機能別に分かれていれば、
「ログイン」
「領収書の登録」
「承認ルート」
など、自分が困っている項目を選べます。
ここで重要なのは、
単に説明を動画へ置き換えたことではありません。
社員が必要な情報を探しやすい単位に分けたことが、
問い合わせの減少につながりました。
ヘルプデスクの対応工数を月間約120時間削減
問い合わせ件数が減ったことで、
社内ヘルプデスクの対応工数は
月間約120時間削減されました。
1日8時間で換算すると、
約15人日分に相当します。
システム導入時の問い合わせ対応は、
一時的な業務に見えるかもしれません。
しかし、全社員を対象としたシステム変更では、
同じ時期に多くの質問が集中します。
担当者一人ひとりの対応時間が積み上がれば、
本来行うべき総務・経理業務にも
大きな影響が出ます。
操作説明動画の効果は、
動画の視聴回数だけでは判断できません。
担当部門が説明や問い合わせ対応に
使っていた時間を、
どれだけ本来の業務へ戻せたかも、
重要な成果です。
1件あたりの対応時間も、約5分の1に短縮
もちろん、動画を用意したからといって、
すべての問い合わせがなくなるわけではありません。
個別の申請内容や例外的な処理など、
担当者による確認が必要なケースは残ります。
それでも、問い合わせを受けた担当者が、
操作方法を最初から一つずつ
説明する必要はなくなりました。
該当する動画のリンクを案内し、
必要な箇所を見てもらうことで
回答できるようになったためです。
以前は1件あたり10〜15分かかっていた対応が、
動画の導入後は2〜3分程度、
約5分の1に短縮されました。
動画化の効果には、二つの段階があります。
一つは、社員が動画を見て自己解決し、
問い合わせ自体が発生しなくなること。
もう一つは、問い合わせが発生しても、
担当者が動画を案内することで
短時間に対応できることです。
問い合わせ対応の負荷を考える際には、
件数だけでなく
「問い合わせ件数×1件あたりの対応時間」
で捉える必要があります。
成功の理由は「辞書のように使える設計」
今回の成功要因は、
動画を作ったことだけではありません。
社員が困った瞬間に、
必要な説明をすぐに探せるようにしたことが
重要でした。
業務中に操作方法を確認したい社員は、
30分や60分の研修動画を
最初から見る余裕はありません。
「領収書のアップロード方法だけ知りたい」
という人にとっては、
その操作だけを数分で確認できる方が実用的です。
また、動画のタイトルも、
内容がすぐ分かる形にしておく必要があります。
「操作説明動画1」
「操作説明動画2」
ではなく、
「領収書をアップロードする方法」
「承認状況を確認する方法」
といった、社員が検索しやすい名称にします。
動画を短くすること自体が目的ではありません。
必要な情報を、必要なときに取り出せる
「辞書」のような状態を作ることが目的です。
動画とPDFは使い分ける
今回の事例は、
PDFマニュアルが不要だという話ではありません。
詳細な経費規程や例外処理、申請条件の一覧などは、
文章で確認できる方が適しています。
後から正確な表現を引用する場合にも
文書が必要です。
一方、画面上の操作手順やログイン方法、
新旧システムの主な変更点などは、
動画の方が直感的に理解しやすくなります。
PDFか動画かという二者択一ではなく、
それぞれの特性に合わせて
役割を分けることが重要です。
問い合わせを減らすのは「動画」ではなく、説明の仕組み
今回の事例では、100ページ近い説明資料をもとに、
1本あたり3分以内の機能別動画を
約20本作成しました。
その結果、過去の同様のケースと比較して、
- 問い合わせ件数が60%減少
- ヘルプデスクの対応工数が月間約120時間減少
- 1件あたりの対応時間が10〜15分から
2〜3分へ短縮
という効果が得られました。
ただし、成果を生んだのは、
資料を単純に動画へ変換したことではありません。
社員がつまずきやすいポイントを選び、
短い動画に分け、
必要なときに検索して確認できる状態
を作ったことが重要でした。
社内システムの操作説明や
制度変更の資料をお持ちであれば、
すべてを一度に動画化する必要はありません。
まずは問い合わせが多い項目を一つ選び、
短い動画として試す方法があります。
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