説明業務を動画化すると、実は「教育」より先に「業務標準化」が進む

社内研修や業務説明を動画化する目的として、
まず思い浮かぶのは

「教育担当者の負担を減らすこと」

ではないでしょうか。

同じ説明を何度も繰り返さなくてよくなる。
担当者が不在でも、
新入社員が自分のタイミングで学べる。
複数の拠点や部署に、同じ内容を届けられる。

もちろん、
これらは動画化によって期待できる効果です。

ただし、実際に社内説明を動画にしようとすると、
教育効果が表れるより前に、
別の変化が起こります。

それは、これまで曖昧だった説明内容や
業務手順を整理しなければ、
動画そのものを作れないということです。

つまり、社内説明の動画化は、
教育を効率化するだけではありません。
動画を作る過程で、
業務標準化が進む可能性があります。

目次

資料があるだけでは、業務は標準化されていない

業務標準化とは、
単にマニュアルや資料が
存在することではありません。

業務の目的、作業の順番、判断基準、注意点、
例外が発生した場合の対応などが整理され、
担当者が変わっても一定の品質で
業務を進められる状態を指します。

社内に説明資料やマニュアルが用意されていても、
実際には担当者による補足がなければ
理解できないことがあります。

「この資料を読めば分かるはず」と渡しても、
受け取った側から質問が相次ぐ。
結局、担当者が口頭で一から説明している。
あるいは、
説明する人によって内容や順番が異なる。

このような状態では、資料はあっても、
業務知識はまだ人に依存しています。

動画を作ろうとすると、説明の曖昧さが見えてくる

対面で説明する場合、
説明内容が多少曖昧でも、
その場で補足できます。

相手の反応を見て言い換えたり、
質問された部分だけ詳しく説明したり、
別の資料を見せたりすることが可能です。
経験のある担当者であれば、
相手に合わせて臨機応変に対応できるでしょう。

一方、動画では、説明者がその場にいません。

そのため、動画を作る前に、
少なくとも次のようなことを
決める必要があります。

誰に向けた説明なのか。
どこから説明を始めるのか。
どの順序なら理解しやすいのか。
必ず伝える内容は何か。
例外対応をどこまで扱うのか。

普段は何となく説明できていたことでも、
動画として一本の流れにしようとすると、
曖昧な部分が目につくようになります。

複数の担当者がいる場合には、
さらに違いが表面化します。

Aさんは必須だと説明しているが、
Bさんは任意だと考えている。

マニュアルには書かれているが、
現場では別の運用が行われている。

部署によって手順が異なる。
制度変更後も、古い説明が残っている。

一本の動画を作るためには、
どの説明を正式なものとするかを
決めなければなりません。

この認識合わせが、
業務標準化の出発点になります。

動画化によって進む3つの標準化

1.説明内容が統一される

動画を使えば、
原則として視聴者全員に同じ説明を届けられます。

担当者によって、
説明の詳しさや順番が変わることを抑えられます。

ただし、動画にすれば自動的に説明が
統一されるわけではありません。
制作前に、必ず伝える内容、
補足として伝える内容、
別の資料に分ける内容などを
整理する必要があります。

この整理を経て初めて、
会社としての「標準的な説明」が形になります。

2.判断基準や暗黙知が言語化される

業務に慣れた人は、
自分では意識せずに判断していることがあります。

「この場合は上長に確認する」
「この顧客だけは別の処理をする」
「この入力内容なら申請を差し戻す」

といった判断です。

本人にとっては当たり前でも、
新任者には分かりません。

動画の台本やスライドを作る過程では、
こうした判断基準を
言葉や図に置き換える必要があります。
その結果、
ベテラン担当者の頭の中にあったノウハウが、
組織で共有できる情報になります。

3.変更時に更新すべき範囲が分かりやすくなる

説明が人に依存していると、
制度やシステムが変わった際に、
どの資料を直し、
誰に再説明すべきかが分かりにくくなります。

一方、説明内容がテーマ別、
手順別に整理されていれば、
変更の影響範囲を特定しやすくなります。

この点でも、長い動画を一本作るより、
数分程度の短い動画に分けた方が
運用しやすくなります。
変更があった部分だけ差し替えればよく、
全体を作り直す必要がないからです。

標準化を進めるのは、完成した動画ではなく制作過程

ここで注意したいのは、
業務を標準化するのは
動画そのものではないということです。

動画を作るために、説明内容を整理する。
関係者の認識を合わせる。
手順や判断基準を言語化する。

この制作過程が、業務標準化を進めます。

動画は、その結果として整理された説明を保存し、
繰り返し届けるための器です。

そのため、
既存のPowerPoint資料を
最初から最後まで読み上げるだけでは、
十分とはいえません。

会議での口頭説明を前提に作られた資料には、
作成者にしか分からない表現や、
古い運用の記述、
補足がなければ理解しにくい
図表が含まれていることがあります。

まず考えるべきなのは、

「この説明を受けた人に、
最終的に何ができるようになってほしいのか」

です。

そのゴールから逆算して内容を整理することで、
初めて動画が業務の中で使えるものになります。

すべての業務を動画化する必要はない

もちろん、社内の説明業務を
すべて動画にする必要はありません。

動画に向いているのは、

同じ説明を何度も行っている、
内容がある程度共通している、
画面操作や手順を見せた方が分かりやすい、

といった業務です。

たとえば、

新人向けの基本業務、
経費精算などのシステム操作、
制度変更の説明、
繰り返し質問される申請手続き

などが挙げられます。

反対に、

個別判断が多いもの、
対話自体に意味があるもの、
内容が頻繁かつ全面的に変わるもの、

などは、動画化に向かない場合があります。

大切なのは、動画を増やすことではありません。

まずは、毎月何度も説明している業務や、
担当者による説明差が出やすい業務を一つ選び、
標準となる説明を整理することです。

動画を作ることより、「標準となる説明」を作る

社内説明の動画化によって期待できるのは、
説明時間の削減や
教育の効率化だけではありません。

動画を作ろうとすることで、
説明内容の曖昧さが見え、
担当者ごとの認識の違いが明らかになります。
そして、
業務手順や判断基準を整理する必要が生まれます。

その過程で、
属人化していたノウハウが会社の中に残り、
誰が説明しても
一定の内容を伝えられる状態に近づいていきます。

社内説明を動画化するとき、
最初に考えるべきなのは、
どの動画編集ツールを使うかではありません。

誰に、何を、どの順番で伝えるのか。
会社としての標準的な説明は何か。

そこを整理できれば、
動画は単なる教育コンテンツではなく、
業務を標準化し、
社内にノウハウを蓄積するための仕組みになります。

「同じ説明を繰り返しているが、
どこから動画化すればよいか分からない」

という場合は、まず一つの説明業務を取り上げ、
内容を整理するところから始める方法があります。

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